転職の面接準備でしなければいけないこと | 転職のすべて 連載第4回

転職

面接の準備

さて、運良く書類選考に通過できたら次は面接です。面接の合否は、準備で8割決まります。でも準備と言っても何をしたらいいの?という人がほとんどのはず。まずは面接の前にするべきことをご紹介します。

自己紹介の内容を練る

最初に一般的な面接の流れをおさらいしておきましょう。

1. アイスブレイクと採用側からの説明
2. 自己紹介
3. 志望動機
4. フリー質問タイム
5. 求職者からの質問タイム
6. 条件の確認

この中で、自己紹介と志望動機は面接の合否の6割ぐらいを決めると言っても過言ではありません。そして、自己紹介と志望動機は質問されることがあまりないので事前準備でほぼ完璧にすることができます。

さて、そこで自己紹介の内容ですが、大まかに分けて自己紹介は以下のようなことをしゃべります。

– 社会人になってから働いた企業名
– 退職(転職)理由
– 空白があればその理由

自己紹介の内容はほぼ職務経歴書に書いてあることになりますので、あまり詳しく話す必要は無いです。むしろ、転職経験の多い人が全部の職歴を説明し始めると非常に冗長になるので、かいつまんで話しても構いません。あなたの職歴が応募している内容にマッチしているかどうかは書類選考の時点で判断できます。つまり、いかにあなたが面接で職歴を立派に語ろうとしてもそれはすでに知っている内容なので冗長になりがちです。自己紹介で大切なのは、経歴をきちんと喋れて退職理由がきちんとしているかということです。

とても大事な退職理由

職務経歴を語る上で大事なのは退職理由です。基本的に、履歴書上は「一身上の都合により」と書かれることが多いため書類選考でもあまり気にしませんが、直近数社の退職理由はきちんと話せるようにしておく必要があります。そして、これは最も大切なことですが決してネガティブな理由を述べてはいけないということです。退職理由にはネガティブなもの、ポジティブなものがあります。事実を述べるのは大切ですが、必要以上にネガティブなことを面接で喋る必要はありません。

ちょっと具体的な例を挙げてみましょう。
「労働時間が長時間に渡り体調を崩して退職した。」
「たまたまピンチヒッターで担当した業務に興味を持ち、もっと深掘りをしたいと思ったため転職を決意した。」
自分が採用する側に立って、どちらの人を採用したいと思いますか?どちらの退職理由について、「ほうほう、それで?」と深掘りしたくなりますか?ちなみに、後者の回答は確実に「その会社でその仕事をすることはできないのですか?」と質問されますので回答は用意しておきましょう。

嘘をつく必要はないですが、もっともな理由を作ることは面接で大事なことです。ですが、これは驚くほど知られていません。転職エージェントで添削されているはずの職務経歴書でも、非常にネガティブな転職理由が書かれている場合が多くあります。準備段階ではこの退職理由を綺麗にしておくことを強くおすすめします。

志望動機

自己紹介と志望動機、どっちが面接で大事ですか?と聞かれると、それは完全に志望動機です。志望動機は職務経歴と異なって文章で確認するのが難しいからというのもありますが、経験などは書類選考で確認して、志望動機や人となりを面接で確認するというパターンが多いからかもしれません。

志望動機を準備する上で大事なのは、志望動機が絶対応募した会社じゃないといけない理由になっているかです。シンプルにこれだけです。例えばトヨタ自動車を受けるとしましょう。「私は自動車が好きで以前から自動車生産に関わる仕事がしたいと思い、御社を志望しました。」と志望動機を述べたとします。面接官は十中八九聞いてくるでしょう、「それは日産自動車ではできないことなんですか?」と。

面接を受ける人の多くは転職エージェントや面接本などで対策をしているにも関わらず、志望動機がオンリーワンになっていない人がほとんどです。つまり同業界で別の会社を受けるときにも使えそうな志望動機を述べる人が非常に多いということです。もちろん、その方が楽なのはわかりますが面接をする側からしてみると、そういった志望動機はもはや聞き飽きているレベルなので不合格となります。

もちろん、本当にオンリーワンの理由を見つけるのは非常に大変です。「御社は日本で最大の販売台数を誇り、そのような大企業で働きたかったからです。」と述べれば確かに自動車業界ではオンリーワンですが、「フォルクスワーゲンなら世界一ですよ?」と言われれば世界レベルでおしまいです。

面接の準備の大半の部分は、この志望動機を完璧なものにするべく費やすべきです。志望動機を述べる際に中途半端なものでは今まで書いたように質問されて終わってしまうことが多くなることはおわかりいただけたかと思います。このやり取りをしたいからこそ、面接官側は書類ではなく対面で志望動機を確認したい、だから面接をすると言っても過言ではないでしょう。

では、理想的な志望動機とは何でしょうか?一言で言えば、理想的な志望動機とは受ける企業向けにきちんと練られたもので、かつどんな突っ込みにも耐えられる準備ができているもの、となります。簡潔な一文で終わる志望動機はなかなかありません。突っ込まれてそれに論理的に答えられる準備が必要なのです。

トヨタの例で続けると、「御社は日本で最大の販売台数を誇り、さらに採用している○○というマーケティング手法に非常に興味を持ちました。一見遂行が難しく見えるこの手法を、他社とは異なって採用しているかと思います。私は学生時代にマーケティングを専攻しており、この手法についてゼミで研究課題に上がっていました。そんな御社に以前から興味があり、また自分がこれまで就いてきた自動車販売のノウハウを活かして行きたいと考え、御社を志望しました。」となります(この手法は架空のものです)。

この志望動機を作るには、トヨタが他社と違うマーケティング手法を採用していること(あくまでも例です)を知っていなければいけません。こういった研究をしてくる求職者はとても少ないものです。そして、面接を自分のペースへ引き込むことが何よりも大切です。

志望動機のよくあるNG事例として、「御社の社風」「御社の福利厚生」といった事業以外のことを志望動機にする場合です。転職の本などによってはこれを推奨している場合もありますが、社風や福利厚生が良いからといってその会社に入る動機になるというのは論理的ではありません。上で述べている「オンリーワンである必要性」を理解していればおわかりになるかと思いますが、「あなたはどこで弊社の社風を知ったんですか?」「仮に入社したとしても、福利厚生が良い会社が他にあったらまた転職しますよね?」と聞かれたらどうでしょう。回答に窮する可能性が高くなってきます。そもそも普通に考えて、社風がいいから会社入りますという動機の意味がわからないので、そんなことを書いている本は今すぐ捨てた方がよいでしょう。

面接においてできるだけ質問のフィールドを自分の方へ引き込むのはとても重要です。なぜなら面接の場では予測不可能な質問が降ってくる可能性が非常に高いからです。自分のフィールドに相手を引き込むことができれば質問内容が対応可能なものになり、得意な分野で回答も論理的にできる可能性が高まるのです。

そのためには、書類上や口頭で話す予定の志望動機や自己紹介に「エサ」を仕掛けることが非常に大切です。これはドキュメント作成時にも言えることですが質問することが無いと、「あなたが仕事をする上で大切にしてるのはお金とやりがいのどちらですか?」とか、「今まででやってしまった最大の失敗のエピソードを教えてください」みたいなめんどくさい質問の比率がどんどん増えていきます。

「エサ」とは何でしょうか。それはポジティブに突っ込める要素です。「御社の社風に惹かれて応募しました!」「弊社の社風ってどんなところですか?」「(チーン)」という光景はよくあるものですがこれに非常によく似ています。

「大学で○○という言語について研究していました。新聞記事で御社の開発にその言語を利用していると知り興味がわき、応募するに至りました。」といえば、「その言語でどういうことをしてましたか?」「その言語のどういうところに魅力を感じましたか?」といったように、自分で提供したトピックへの質問が返ってくるように誘導することができます。

これは予測不可能な質問が飛んでくることの多い面接において非常に役に立ちます。自分が選考者ならこんなところに引っかかるだろうな、と考えながら志望動機やドキュメントを作っていくことが大切です。ただし、自分のことを話しすぎるのは禁物です。質問に対して話が長い人は嫌われる傾向が強いです。常に、聞かれたことに的確に答えることを心がけましょう。

有価証券報告書とアニュアルレポートを読むこと

企業情報の下調べは厄介ですが、公式サイトを読むことが非常に大きな助けになります。また、その会社が上場しているとしたら有価証券報告書と株主向けのアニュアルレポートは間違いなく公式サイトで見ることができます。特に目を通すべきところは会社の沿革、事業内容、事業の状況、事業セグメントごとの売上、利益、特に自分が受ける部署が関連する部分の細かい情報などです。売上の多くを特定の企業に依存している場合有価証券報告書に記載されていることが多くありますのでそのあたりの情報も非常に有用です。

例えば、スマートフォンアプリのゲームを販売している会社は、実質売上がAppleとGoogleからのみ上がっている場合が多くあります。このことは有価証券報告書に記載されていることですので、チェックしておき面接のネタに使えるかもしれません。「御社はマーケットシェアよりも多くの割合でAppStoreからの売上が上がっており、iOSエンジニアとして魅力を感じました」と言ってみたらどうでしょう。「お、この人は有価証券報告書ちゃんと読んでるな?」とさり気なく気づいてもらえるでしょう。(その程度で?と思われるかもしれませんが、有価証券報告書すら読んでこない人ばっかりなんです。)

面接ネタ以外にも、そもそも採用に応募する会社を探すのにも有価証券報告書は役に立ちます。利益率の高い会社は比較的給与がよく、利益率の悪い会社はその逆であったり、理由が触れられずに極端に現預金が減少している場合はこの会社、大丈夫かな?と疑う材料になったりします。従業員の平均給与や役員の経歴、オフィスの場所など有価証券報告書は採用シーンでも非常に有用なドキュメントですので、是非目を通しておきましょう。

アニュアルレポートについては、株主向けに売上や利益の直近数年の推移がわかりやすく記載されています。有価証券報告書は表組み程度が限界ですので、よりグラフィカルに財務データなどを理解することができます。BSの読み方がわからない場合でもアニュアルレポートは比較的素人にもわかりやすく説明されていますので上手く組み合わせて利用しましょう。

フリー質問の準備

フリー質問タイムは求職者にとって恐怖の時間です。何を聞かれるかわからないですし、面接官との相性も多分にあります。まず、自分の業務経験に対する質問は完璧に答えられるようにしておきましょう。また、回答する内容は常にポジティブにする必要があります。一番顕著に出るのが、「あなたの短所は何だと思いますか?」という質問です。大抵の人は、「おっとりしすぎている性格」「スピーディーに仕事ができない」「こだわりが強すぎる」といったありきたりな内容で返してきます。

ところが、「うーん、短所という短所は無いんですがそれが短所かもしれません!」「せっかちなところだと思いますが、逆にそのお陰で仕事がスピーディーにできていると思います。」といった様にポジティブに返してくる人がいます。

これは非常に好印象を与えられるので是非とも答えを準備してください。もちろん、自分に嘘をつくと突っ込みが入って露呈する可能性があるので注意が必要です。

「給料とやりがい、どっちが大事ですか?」という質問もよくあります。これは答えに窮する人が多い悪質な質問です(笑)。もちろんこれも正解は無いのですが、ポジティブに答えるという観点で言うと、「給与」の方が無難です。

なぜなら、「やりがい」を重視する会社は「給与」が安かったり残業代などをないがしろにしがちです。これは私の主観になってしまいますが、「給与」と答える人は現実的な判断ができる人なんだろうな、という印象を受けます。

もちろん「給与です、なぜなら〜」で論理的な回答ができている場合に限ります。もし、「給与」と答えて落ちてしまったらその会社はブラックだから受からなくて良かった!と思って諦めましょう。

「うちの会社でどんな仕事がしたいですか?」といった質問も頻出です。頻出ですが、きちんと回答できる人は非常に少ない質問でもあります。志望動機のところで触れていますが、この質問に対しても「オンリーワン」であることが必要です。ただし、多くの場合において完全に任せたい仕事を公開していることは少ないため、正解にたどり着きにくいのです。

例えば、比較的曖昧な「企画部」といった採用の場合、事業計画など経営企画的なことを求められたり、外部との折衝などのアカウント担当のようなことを求められたりと様々です。この場合、どんな仕事がしたいですか?と聞かれてドンピシャの回答ができる求職者はなかなかいません。ただ、それはまともな面接官ならわかっていることなので正解を答える必要があるというよりは、「あ、この人よくうちの製品のこと見てるな」と思わせられるような答えができることを正解とすると良いでしょう。

NG率の高い回答として、過去の会社のニュースを見てバズった案件をやってみたいと回答することです。ホンダの自動車マーケティング採用を受けるのに、「ホンダジェットを売りたいです!」と回答するようなイメージです。

そんなバカな回答する人いるの?と思われるかもしれません。私も不思議でならないのですが、求人票を読んでないのか奇をてらっているのかそのような回答をする人は非常に多いです。しかし多くの場合バズっている案件はメインストリームのビジネスではない場合が多いですし、メインストリーム事業の担当者は突然バズるようなサイドビジネスを嫌っている場合が多い(あくまで主観です)ので、確率的に触れない方が無難です。

求人票を見ると、BtoC企業なら特定製品や特定サービスの担当をしていただきます、といった具合にヒントが書いてあるので、これをどう料理するかが勝負です。変に子会社事業の色物案件に言及しても面接官が知らない可能性もあるので触れない方が無難です。

とにかく、フリー質問は業務経験以外の話になると色々なパターンが多く、それぞれに回答を用意しておくことは現実的ではありません。臨機応変に回答する力が求められますが、有価証券報告書やアニュアルレポートを読み込むような事前準備はフリー質問に必ず活きてきます。また、ここでも常にポジティブな回答をすることを心がけるのを忘れないようにしましょう。そして、質問しがいのあるドキュメント作成を心がけてできるだけ相手をこちらのフィールドに引き込みましょう。

求職者からの質問タイム

求職者からの質問については、よっぽど変なことを聞かなければ選考の材料にはなりません。自分の疑問に思ったことをなんでも聞きましょう。あまり面接などでは向こうからは教えてくれないのですが、給与の上がるペースだったり、賞与の出る条件などは企業によってまちまちなので予め確認しておくと良いでしょう。入社時期によってボーナス支給がない場合は実質年収がダウンになってしまう場合もあるので重要です。有給休暇の付与基準、試用期間中の制限事項なども同様です。

条件を考えておく

さて、中途採用を受ける上で自分の希望年収を考えておくのは非常に大事なことです。転職というと給料がアップするというイメージを持っている方も多いと思いますが、多くの場合で下がるか変わらずです。年収が上がって転職できる人はヘッドハンティングされた人や本当に能力が高く幹部採用されるような人だけで基本的には同業種同職種ならステイかややダウン、異業種はダウンと考えておきましょう。

その上で、自分の生活状況などを鑑みていくらまでなら下げられるかを想定しておく必要があります。面接では特に給料の話は無く勝手に向こうから書類ベースでオファーされる場合もありますし、オファー面談という年収提示をしてくれるだけの面談が内定後に実施されることもあります。この段階では、聞かれたら答えられるぐらいのイメージで問題ありません。

さて、ここまで面接準備編のお話でした。次回はいよいよ面接についてご紹介したいと思います。

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